泥かぶら 前篇



「泥かぶら」という話があります。演劇などにもなっているようです。
良い話なので紹介しておきます。





昔、ある村に顔の醜い少女がいました。孤児で、家もなく、森の落葉の中にもぐり、橋の下に寝る。色は真黒、髪はボウボウ。着物はボロボロ、身体は泥だらけ。少女は、その醜さゆえに、「泥かぶら」と呼ばれていました。子どもからは石を投げられ、唾を吐きかけられ、泥かぶらの心はますます荒み、その顔はますます醜くなっていくばかりです。


ある日のことです。泥かぶらがいつものように村の子どもたちと争っていると、旅のお爺さんが通りかかりました。 悲しみに打ちひしがれた泥かぶらを慰めていると、泥かぶらは、「きれいになりたいなあ」とつぶやき、お爺さんにその方法を問います。お爺さんが教えてくれた方法は、3つありました。「まずは、自分の顔を恥じないこと。2つ目は、どんな時にもにっこりと笑うこと。そして3つ目は、人の身になって思うこと」


泥かぶらは、激しく心を動かされます。というのも、それらは、今までの自分とまったく正反対の生き方だったからです。 「この3つを守れば村一番の美人になれる」 お爺さんの言葉を信じた泥かぶらは、その通りの生き方をしはじめます。しかし、急に態度の変わった泥かぶら見て、村人は不審に思うばかりか、嘲笑し、中傷するのです。しかも川面に移る自分の顔を見ても少しも美しくなっていません。


泥かぶらが絶望感に襲われていると、事件が起こります。村一番の美人で一番お金持ちの庄屋の子こずえが、どうしたことか、「こわいよー」と叫んで、逃げ回っていたのです。こずえは、日頃から泥かぶらを嫌っていじめていた者の一人です。何かわけがあるに違いありません。果たして、こずえの後ろから、父親の庄屋が竹の鞭を持ってやって来ました。庄屋は大切にしていた茶碗を割られたことで、怒り心頭に達していました。


父親の怒りを逃れるために、こずえは、泥かぶらに罪を着せてしまいます。怒り狂ったような庄屋は、娘の言うことを信じて疑いません。泥かぶらを見つけると、容赦なく鞭で打って、折檻をし始めました。泥かぶらは、黙ってその鞭を受けました。何度も何度も叩かれ、ひどい言葉を浴びせられながらも、お爺さんのあの言葉を思い出しながら、泥かぶらは最後まで耐え忍びました。


しかし、それでも泥かぶらの顔は少しもきれいになっていません。絶望感と怒りに苛まれた泥かぶらが一人泣いていた時でした。泥かぶらを呼ぶこずえの声がしました。「泥かぶら。堪忍して」そして、こずえはおずおずと自分が一番大事にしていた櫛を差し出したのです。美しい櫛に心引かれるものの、泥かぶらは自分のちぢれた頭を思い出し「あたいなんか……だめだ」とためらいます。






続きはまた明日載せます。
今日の写真は庄司カメラマンのランタンフェスタの時のものです。
私の写真とはぜんぜん違いますね。